慢性腰痛の対策
慢性腰痛とは、3か月以上続く腰痛のことです。腰痛は、日本人の自覚症状の中で最も多いものの一つで、生涯で8割以上の人が経験するといわれています。慢性腰痛の原因には、骨や関節などの病気が関係している場合もありますが、生活習慣やストレスなども大きく影響しています。慢性腰痛の治療は、薬物療法やリハビリテーションが中心ですが、痛みの根本的な原因を把握することが重要です。また、日常生活でできる予防や改善の方法もあります。ここでは、慢性腰痛の原因と対策について、簡単に説明します。
【原因】
慢性腰痛の原因は、大きく分けて以下の2つに分類できます。
・特異的腰痛:検査で原因を特定できる腰痛で、腰部椎間板ヘルニア、椎間関節症、変形性脊椎症、腰部脊柱管狭窄症、骨粗しょう症などの病気が関係しています。まれに内臓疾患や腫瘍によっても起こります。特異的腰痛は、慢性腰痛の約10%程度を占めるといわれています。
・非特異的腰痛:検査を行っても原因が特定できない腰痛で、慢性腰痛の約90%程度を占めるといわれています。非特異的腰痛の原因としては、以下のようなものが考えられます。
・長時間のデスクワークや同じ作業の繰り返し:前かがみの姿勢や腰のひねりが腰に負担をかけ、筋肉や関節の柔軟性を低下させます。また、腹筋や背筋の筋力が低下し、脊柱の支持力が弱まります。
・運動不足:筋肉が衰えると、脊柱のS字カーブを維持することができず、上半身の重さを支えきれなくなります。また、筋肉が硬くなり、コリや痛みを引き起こします。
・ストレスや心理的要因:ストレスや不安などが続くと、脳の仕組みが正常に働かなくなり、痛みを強く感じたり長引いたりすることがあります。また、痛みやその不安から体を動かさず、不自然な姿勢になってしまうこともあります。
・ベッドやソファーなどの家具:柔らかすぎたり硬すぎたりするベッドや布団、座面が低く深く沈み込むソファーなどは、腰に負担をかけることがあります。脊柱の生理的湾曲を維持できるかどうかが重要です。
【対策】
慢性腰痛の対策は、以下のようなものがあります。
・薬物療法:病気が原因となっている場合は、その病気に対する治療が第一です。消炎鎮痛薬や筋弛緩剤などの薬が処方されることがあります。非特異的腰痛の場合は、抗うつ薬や抗てんかん薬、オピオイド鎮痛薬などが使用されることがあります。また、神経ブロック療法という、腰の神経やその周辺に局所麻酔薬やステロイドを注射する治療もあります。ただし、これらの治療は痛みを一時的に和らげるものであり、根本的な解決にはなりません。副作用や依存性にも注意が必要です。
・リハビリテーション:腰の周りの筋肉を鍛えたり伸ばしたり緩めたりすることで、腰の負担を減らし、痛みを改善することができます。適度な運動やストレッチ、身体を整える事が有効です。また、腹筋や背筋を強化することで、脊柱の支持力を高めることもできます。自宅でできる簡単なストレッチの方法は、後述します。
・考え方を変える:認知行動療法という、ものの見方や受け取り方を変えることで、気持ちを楽にする治療法があります。慢性腰痛になると、マイナスの思考に陥りがちですが、考え方を変えれば、腰痛に対するストレスを軽減することができます。例えば、「痛みはあるけど〇〇ができた」と考えることで、自分のできることに目を向けることができます。この治療法は、専門のカウンセラーや心理士に相談することができます。
・ストレス解消:ストレスや心理的要因が腰痛の原因や悪化の一因となることがあります。そのため、ストレスを溜め込まないことが大切です。ストレス解消の方法は人それぞれですが、趣味やリラクゼーション、睡眠や食事など、自分に合った方法を見つけましょう。また、家族や友人、医師やカウンセラーなど、信頼できる人に相談することも効果的です。
【自宅でできる簡単なストレッチ】 慢性腰痛の予防や改善には、腰の周りの筋肉を鍛えたり伸ばしたり緩めたりすることが効果的です。以下のようなストレッチを毎日行ってみましょう。
- 腸腰筋のストレッチ:仰向けに寝て、右足を曲げて膝を立てます。左足は伸ばしたままにします。右手で右膝を押さえて、左手で右足首を持ちます。右足を伸ばしながら、右膝を胸に近づけます。10秒ほどキープして元に戻し、反対側も同様に行います。これを3回ずつ繰り返します。
- 背骨周りのストレッチ:四つん這いになります。息を吐きながら、背中を丸めて頭を下げます。息を吸いながら、背中を反らせて頭を上げます。これを10回ずつ繰り返します。
以上のストレッチは、腰痛の症状がないときに行ってください。痛みがあるときに無理に行うと、かえって痛みを悪化させる可能性があります。また、ストレッチの前後には、軽くウォーミングアップやクールダウンを行ってください。